入れ歯の役割
1、 口から食べること、咬むことの重要性
① 栄養摂取
口腔機能によって大脳皮質のかなり広い領域が活性化されることになります。
「チューブ栄養よりも口から食べたほうが健康になる」
よって入れ歯を使い脳を活性化させることは重要になります。
② 脳の活性化
咬むことを制限することによって、コリン作動性ニューロンが減少したり、記憶に関与しているドーパミン大脳皮質濃度が低下して、痴呆を進行させる可能性があります。
一方、日常生活動作(ADL)が悪化したり、痴呆になると、入れ歯使用率が低下します。
極論になるかもしれませんが、痴呆になったから入れ歯を使わないのではなく、入れ歯を使わないから痴呆になったと言えるのかもしれません。
③ 口から食べたい
口から食べ、味覚を楽しむことによって、精神的な欲求が満たされていきます。
2、 咬むことによる平衡感覚、運動能力の向上
入れ歯装着時のほうが、入れ歯を外している状態と比較して、体の揺れが小さく直立姿勢維持の安定化につながります。
寝たきりの方に入れ歯を作り食事が摂れるようにした結果、痴呆も改善して歩けるようになれば、要介護者のみならず介護者にとっての非常に有益なことになります。
3、残存組織の保護
入れ歯を外したままでいると、残っている歯牙で口腔内に傷を付けて潰傷ができたり、低位咬合(かみ合わせが低い)による口角炎になり、ますます入れ歯を入れることが難しくなります。
4、コミュニケーション
入れ歯を装着してない時には、話し相手に自分の意思が伝わりにくく、人と話すのがおっくうになってしまい、会話、会食などに対人関係に支障をきたし、閉じこもりにつながりかねません。
入れ歯には顔貌を調和させ、審美性を向上させる働きがあります。
入れ歯がないと人と会うのが恥ずかしく、また、人前で笑えなくなり、感情の表現や表情によるコミュニケーションがとれなくなってしまいます。
入れ歯を入れることによる弊害
1、 デンタルデバイス感染症
入れ歯の材料であるレジンは、微生物の温床となりやすく、バイオフィルム(デンチャプラーク)つまり歯垢や歯石のようなものが形成されやすい条件となっています。
2、 誤嚥、誤飲
口腔微生物は、誤嚥性肺炎、亜急性心内膜炎、胃潰瘍、糖尿病など、種々の疾患に関係があることがわかっています。
ですから、ご自身の歯牙だけでなく、入れ歯を入れっぱなしにせず入れ歯の清掃、洗浄もしっかりしましょう。
入れ歯の重要性
入れ歯を装着し、口腔の機能を回復することは、生きるためのエネルギーを確保するだけでなく、免疫力を高めたり、全身機能の向上や精神安定にもつながり、結果的にADLを高めることになります。
『自立した老後、生きがいのある老後』を送るために、入れ歯は非常に重要な働きをしています。
新しい入れ歯(入れ歯)を使いこなすためには、練習と調整が必要です。調整が終わり、気持ちよく入れ歯が使えるようになったら歯科治療はひとまず終わりですが、良好な状態を持続するためには、この後の管理がとても大切になります。
管理が大切な理由
・ 年齢とともに顎の形も少しずつ変化します。
・ お口の手入れが行き届かないとバネをかけている歯が虫歯になったり歯周病になって入れ歯が使用できなくなることもあります。
・ 入れ歯は、様々な環境下にあります。
冷たいものや熱い食べ物など温度差の激しい条件下にさらされている
人の体重に近い咀嚼力(咬む力)を常に受け止めている
不注意による入れ歯の落下などの強い衝撃をうけている
入れ歯の使用期間が長くなると、入れ歯の材質は劣化し、人工歯はすり減り、変化した顎に合わなくなった入れ歯は安定感を失い、痛みや入れ歯が割れる原因となります。
また、合わなくなった入れ歯を使い続けることにより体に悪い影響を与えることもあり、入れ歯の寿命(入れ歯の調整や修理や復元できる状態)は短くなってしまいます。
しかし、毎日のお手入れと定期的な検査を受けることにより、入れ歯の寿命や調子のよい状態を長く保つことは可能です。
年に1、2度の定期検査をうけることにより、顎や入れ歯の痛みを早期発見し、修復不可能になる前に処置が行え、入れ歯の調子が良い状態をそのまま保つことができます。また、通院数も少なくて済みます。
現在お使いの入れ歯の調子が良い悪いに関係なく、専門の歯科医の定期検査を受けることをおすすめします。